山崎豊子さんの小説『不毛地帯』は、エリート軍人が過酷なシベリア抑留を経て、終戦後は商社で経済戦争に身を投じるという、どこまでいっても戦いの日々を描いた話です。その中で主人公の癒やしのひとときを過ごした場所が、京都・大原にある宝泉院でした。
🍁宝泉院山門から客殿へ
宝泉院は三千院の参道のつきあたりにある勝林院の僧坊にあたります。
入口はつつましい風情でしたが、院の奥にある客殿に入ると目の前に美しい庭が広がっていました。柱を額縁に見立てて風景を楽しむ「額縁庭園」の形式です。庭の名前は盤桓園(ばんかん、立ち去りがたい意)です。
樹齢700年の『五葉の松』です。
『五葉の松』を見ながら、ゆっくりお茶とお菓子をいただきました。
手前側の2本の竹は「理智不二(りちふに)」という二連式の水琴窟です。竹の切り口に耳を当てるとキラキラした鉄琴のような音が聞こえました。
🍁現代アートのような宝楽園
小説『不毛地帯』で描かれたのは夕暮れ時の風景です。少し時間が早かったので、宝泉院境内南側にある「宝楽園」を散策しました。神の世界を岩組、樹花、白砂等で表しているそうです。平成17年につくられた庭で、現代アートを見るようでした。
白砂の枯山水です。
🍁『不毛地帯』の夕暮れの庭
『不毛地帯』の中で描かれたのは、客殿から見る夕暮れの光景です。この時は4時~5時くらいがよいタイミングとお寺に方に聞き、客殿に戻って待つことに。
いよいよ!さ~っと夕陽が射してきました。
風の音とともにゆっくり夕陽が山を下りていきました。
ふと足下をみると木の陰が揺れていました。
壁にも床の間にも木の影が水墨画のように滲みます。
どこか別の世界に誘われるようでした。
宝泉院は見どころが満載。本格的な紅葉はこれからという時期したので、観光客も少なくてゆっくりできました。また訪れたいと思います。
🚃京都駅→(烏丸線)→国際会館駅→(バス25分)→大原→徒歩15分