ドーラの撮れたDay

漫画や小説の聖地巡礼と街歩きが大好きで、素敵な出会いを楽しみながら写真で綴っています。

箱根・ポーラ美術館/ロニ・ホーン展

ロニ・ホーンの作品『鳥葬』が観たくて、箱根ポーラ美術館に行きました。

美術館は広い森の中にあり、屋内展だけでなく森の遊歩道を散歩しながら鑑賞できる屋外の作品もあります。

 

ポーラ美術館の遊歩道から

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Roni Horn ガラス彫刻作品「鳥葬」の横から

 

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Roni Horn ガラス彫刻作品「鳥葬」の上部から

 

木立の中にガラスの円柱が置かれ、その上部にたまった水の表面を、枯れ葉たちがさまざまな顔をもって漂っていました。

「鳥葬」というタイトルは、死者を自然の中に葬るチベットの風習から採られているとのこと。この世にある魂を天に放ち、物質を自然に還すということでしょうか。

 

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SHIMURAbros「Light Odyssey」の一部

 

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SHIMURAbros「Light Odyssey」の横から

 

SHIMURAbrosという2人のユニットの作品。作品タイトル「Light Odyssey」の直訳は「光のオデッセイ」だと思いますが、ギリシャ神話のオデッセウスのことでよいのかな?

はるかな冒険への入り口。1つの光景が重層的な入り口になるメタファーかと。

 

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遊歩道

 

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森のひめしゃらの樹

 

遊歩道では、立派なひめしゃらの樹を見られました。まっすぐに空に向かう姿は、人の祈りを込めた尖塔のよう。

 

ポーラ美術館の館内から

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Roni Horn ガラス彫刻『無題』

 

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Roni Horn ガラス彫刻『無題』

広めの部屋に丸い塊が8体。中に水をたたえているかに見えますが、すべてガラスです。それぞれが周囲の景色を映しこみ、別世界に誘われるようでした。

村上春樹の小説『海辺のカフカ』に、異界の森に通じる"入り口の石”というのが出てくるのですが、その石のことを思い出したり。

 

■ポーラ美術館エントランス

ポーラ美術館は、ガラスが多く使われており、外の森と一体になっているのですが、ガラスを介して室内に届く光の具合に、ふと外と内の隔たりを感じます。丸一日、同じ場所に座ってそれを眺めるのもよいかな。

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ロニ・ホーン企画展のタイトルや言葉について

ポーラ美術館は、モネ、セザンヌ、ゴッホなどの印象派から現代美術まで幅広く所蔵していますが、今回の企画展は、アメリカの現代美術作家ロニ・ホーン日本初の展覧会。

企画展全体のタイトルは『水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』

屋外展示は『鳥葬』のみで、館内は写真、ドローイング、彫刻など、1980年代から40年間にわたる代表作が展示されていました。

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企画展入り口

 

展覧会のタイトルは、テムズ川の表面を撮影した15点の写真シリーズ『静かな水(テムズ川、礼として)』に付された言葉です。

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各写真の下に注釈や問いかけの言葉が書かれていて、美術館サイトに翻訳が掲載されていました。

内容は詩のようでもありナゾばかりですが、「川」や「水」からこれだけ多くの言葉やエピソードが出てくることに驚愕!

 

『水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』は、英語では「When You See Your Reflection in Water, Do You Recognize the Water in You?」

"You See Your Reflection”と" You Recognize”は、日本語訳より奥が深そうですね、

 

ロニ・ホーンの言葉はとても哲学的で、難しい。。。ご本人のインタビューの中でも「思考するように」と仰っているので、自分なりに考えるしかないのですが。

ブルース・スプリングスティーンの歌う♪THE LIVER♪の話などが出てくると、ほっとしてしまいます。

 

『IMA』サイトのインタビュー記事に、ロニにとっての「水」が語られていました。

私にとって水は動詞であり、常に何かしらに触れている「つながる」行為を示していると考えています。

たしかに、水には空気よりも身体感覚として「つながり」を感じるし、運命として入り込まれ巻き込まれる印象があります。

このことは、きっと人類誕生に遡るなのことでしょう。もう一つ、東日本大震災のときにテレビで見た津波の映像が、思いがけず私の意識に塗り込められたことにも気づかされました。

 

アタマと感覚のあちこちが刺激されましたが、宿題がいっぱい。

企画展の会期は3月30日まで。桜の季節になったら、まったく異なる面が現れるのかもしれませんね。🌺